嘘。嘘。嘘。皆嘘。
年寄りの嘘に騙されてはいけない。

経験が足りないから、未熟だから、頼りないから任せられない。
そんなのは嘘だ。
自分が負けるのが怖いだけだ。
自分達より上手くやられるのが怖いだけだ。
自分がわからない事が知られるのが怖いだけだ。
自分ができない事を悟られるのが厭なだけだ。
自分の居場所がなくなるのを怖れているだけだ。

若者たちに任せられない理由なんてどこにもない。
あるはずがない。
そんなのは嘘に決まっている。

経験がないって。経験がないなら経験をさせればいい。
経験をさせない事の理由にはならない。むしろ、逆だ。早く任せて経験させるにこしたことはない。
誰だった最初の頃は経験不足に決まっている。
誰も経験した事のない時代、未知な世界が始まろうとしているなら過去の経験なんて役に立たない。
経験不足を理由に任せないのは狡(ずる)い。欺瞞だ。

やらなければ解らない事がある。
越えねば見えない風景がある。
行かねばわからない世界がある。
勇気をもって最初の一歩を踏み出そう。

七十近い人間に五十年先の事に責任が持てると思うか。
定年間際の人間が十年、二十年先の会社に責任が持てまい。
持てやしない。せいぜい言って自分の定年まで。
だから嘘だというの。嘘つくつもりがなくても嘘になる。
先のない奴は、先々の事なんて考えていないよ。考えられないよ。
目先の事ばかり考えている。だから嘘になる。

以前、定年間際、大手企業の人間に言われましたよ。
僕らは、なるべく定年まで会社が潰れずにいて、できれば、退職金が満額貰えればいいんですよ。
五年先、六年先の話をされても約束できない。私は、五年後には、この会社にいませんからと…。
この会社、もう終わったなと思ったよ。
責任持ちたくても持てない人間が未来の事考えられますか。考えられませんよ。
だったら、経験不足と言おうと、未熟と言おうと、頼りなく見えたって若者に託すしかないじゃあないか。
採用係に言っているんです。人を採用するという事は、相手がどうあろうと、最低四十年は、面倒を見る覚悟がいる。
だから会社はつぶせない。
でも、四十年後には俺は責任持てない。
だから、お前たちに面倒を見てもらうしかない。
お前たちが彼等の面倒を見る覚悟がいるよと。
そうなったら、若い者に採用を任せるしかないじゃあないか。

この国が沈んだら、皆、共に沈むのです。
先のない人間は、先のある人間に道を譲るべきなのです。

経営者というのは、自分の墓穴を掘るような仕事だとも。
七十、八十になっても俺がいなければなんて云うのは、老残無惨ですよ。

創造とは、破壊を伴う。しかし、創造をともなわない破壊は、ただの破壊。
俺は、先輩にも同期の連中にも、あなた方、俺たちは、ことごとく古いものを破壊したけど、何一つ後輩たちに、新しいものを、創造的なものを残していないではないかと…。
若者よ。俺達を全否定しろ。俺のやってきた事に囚われてはいけない。
過去は、過去。自慢にもならない。
俺のやってきた事を全て清算していい。

信じられるかと問われたら、信じられか、信じられないかの問題じゃあない。信じるか、信じないかの問題なんだ。
信じるしかないなら、何を迷う。
できるかと聞かれたら、できるできないの問題ではない。やるかやらないかの問題なのだ。
やるしかないなら、何を問う。

気になるのは、若者が年寄りになってきている事だ。
手を拱いていると、若いうちに老成してしまう。
このままだと、若者が、立ち枯れしてしまう。

羽ばたけ。
今、飛ばなければ、飛ぶ時を失うぞ。