散る桜。
お堀を桜色の染め。
鯉が一片ひとひら、口に入れていく。
一時の事。
毎年の風情。
鯉にも、旬の味があるのかも。

死の床で父は、桜はまだか、桜はまだかと。
桜の花が咲く頃は、桜を見る気力も失せ。

時は無常というけれど、維新の桜も、戦争に負けた時も、異国で闘いが始まった時も、変わらず咲く桜。

なぜ、人間は、あれほど無慈悲になれるのか。

神は、人に愛を与えた。他人を愛おしみ、憐れむ心を与えた。
それが、神の意志である。

その代わり。人は、生きるためには、他の生き物を犠牲にしなければならない。
それもまた、神の摂理。