仕事は、創造、想像。

親父はよく言ってたさ。
世の中なる様にしかならない。

できない事はできない。
できないのに無理してやったって失敗するだけ。
先ず、できる事を、確実にやって実績や知識を蓄えていけば。
今できない事でも、そのうちできるようになる。
無理はしない。でも、諦めない。
それが肝心な事よ。

これは、関東大震災や戦争を生き抜いてきた男の言葉。
親父は、戦後生まれの私から見て、あきれるほど用心深かった。

難しい事から始めようとするから、簡単な処でつまずく。
基本を抑えないで仕事を始めれば、仕事は、基本に向かって逆流する。

なんだって、なまじ、まとめようとするから、まとめられなくなるんだ。
ぶっ壊すくらいの覚悟で、のぞめば、」何とか道は開けるよ。
「男は度胸だ。」と口癖のように言ていたのを覚えている。
確かに、親父は、江戸っ子だった。

親父は、度胸はいいが、臆病でもあった。

命まで取りはしないよ。
こうと決めたら、やり抜くしかあるまい。

日頃、喧嘩しちゃいけないよ。
喧嘩は駄目だと言ってながら。
親父、喧嘩だと言ったら、真っ先に飛び出していった。

昔、三十人を相手に喧嘩したという武勇伝がありながら。
負ける喧嘩しちゃ駄目だと諭しやがった。
あの時は、ブンブン、棍棒を振り回して逃げてきたというから、まんざら、嘘ではないらしい。

できない事はできないんだよ。
でも、できないなりに、諦めないでやっていれば、何とか、道は開けるさ。
最初から、できもしないのに大言壮語し、自分の力を越えた事をしようとせるから息切れをする。
できる事からやればいい。
そして、やると決めた、最後までやる抜くさ。
死んじゃちゃあ、お終いよ。
死ぬ気でやればなんだってできる。
命まで取りはしない。
死んで花実が咲くものか。
それが、死線を何度も越えてきた人の言葉。

自殺するなんて奴はさ、度胸あるけどな。
だって怖いじゃないか。
でも命を粗末にしてはいけないよ。
せっかく、神様から授かったものではないか。

そう言えば、遅ければ、猫でもできる。
仕事は後回しにしてはいけないよ。
その日に片付ける事は、その日のうちにやっておけ。
とも言っていた。

何事も初動で決まる。
初動を間違えなければなるさというけれど。
親父たちは、戦場にいたからね。

兵は、拙速を好む。

初動、三分。
要は、事が起きたら最初の三分で事は決するというの。
確かに、ニュースなどを見てると、通報が三十分遅れたとか言いて責める。
でもね。普段、三十分なんてあっという間の出来事。
それどころか、決定が下されてから一か月たっても何にもしないなんてね。
近頃の日本人は、平和ボケしているから。

始めがあって終わりがある。
終わりがあって始まりがるわけではないさ。
物事には順序というのがる。

日頃から、いざとなたら何をすべきか、取り敢えず項目だけは上がるように訓練してる。
それだも、いざその時のなるととっさに思い浮かばない。
声が出ない。
その点は、この歳になっても、親父にはかなわないと頭が下がる。
若い時の鍛錬が違う。
この様な、動きは若い頃に身につけなければ、身につかない。

決まった項目があるじゃないと言われてもね。
項目と言ってもね。状況や目的によって全然違う。

なぜ、最初に項目の設定をするのか。
それは、項目で、枠組みをするからで。
項目は、基本的に変えない。
足したり、引いたりはしても、基本的に項目は変えないで、内容、中身を変える。
項目を固定する事で、項目を追う事で内容、中身の変化を際立たせることが可能となる。
また、変化した項目を比較する事で、変化の度合いを見る事が出来る。
だから、項目を最初に設定し、仕事を項目ごとに振り分けるようにする。そ
れが仕事の段取りをする鍵。こつ。
項目は、アイテム、要素である。
目次や、次第、アジェンダ、メニュなども項目として使える。
項目に所定の形はあるかと言われると微妙。
冒頭の項目に何を設定するか、作成者の、構想や意図が表されるからで、最初から、例えば、はじめから見たいなことに設定してしまうと単なる穴埋めになる危険性がある。
項目を組み立てたり、並べたり、構成するかっていで。
以後の段取りを構想するのである。
仕事というのは、本来、創作的な事なのである。

項目を挙げると言うのは、自分の頭の中にある項目に組み替えるという事で。
項目は、単一で成り立ってるわけではなく。
目的とか、日時とか、場所とか、責任者、担当者とか、用意する事。調べる事、やっておく事みたいに複数の事が複雑に絡み合い、しかも。時々刻々変化している。
だから、指示されたこと、聞いたこと、見た事を自分なりの項目に振り分け、整理する事で自分のものにする。
頭の中に自分なりのプラットホームを作てフィルターにかけてから出力する。

項目を挙げる事で、どの分が一致していて、どの部分が一致していないかを特定できる。
間違ってる箇所がわかれば修正する事もできる。

仕事というのは最初は、漠然とした情報の塊で取り付く島もない。
もつれた糸の塊で、糸口を見つけるのにも苦労する。
だから、どこから着手するかが問題なんだ。

同じ項目で同じ内容でも、立ち位置によって解釈や、出力が変わる。この点を注意する。
例えば、採用で、同じ考え方、目的でも、責任者と担当者では、やる事が違うから、当然だす出力も違う。
責任者は、方針や考え方、条件を出し、担当者は、実際の手続きや採用計画を立案する。

変易・不易・簡易。
変えるところと変えないところ。そして、その関係。
変化した所と変化していないところ。そして、その結びつき。

仕事って、創作なんだ。
一つひとつ、違う。

仕事には、決まった形があるようでない。
ただ、手順、段取り、筋道はある。

将棋のように、駒の動かし方、最初の配置は決まているが、どこから手を付けるか、初手に決まりはない。
手本、定石はあっても、これでなければという決まった形はない。

早いとこ自分の形を作るんだな。
いろんな処の親父さんたちは、異口同音にいてたな。

最初は、見よう見まねで真似をして。
ある程度基本が出来たら、自分の形にする。

仕事は、想像、創造なんだ。
創造には、破壊が伴う。
創造なき破壊は、単なる破壊に過ぎない。
破壊した後、何を生み出すか。
それが仕事なのだ。

人は老いる。
昔は、厄年になると体力や能力のピークを迎えた。
近年は、そのピークが少し伸びた気がする。

親父はなるようにしかならないよ。
ジタバタすんな。
今、何ができて、何ができないかを見極めるんだな。
そしてできる事から手を付けるんだ。
それがやるという事で。
やり始めた事を見ればそいつのやる気が見える。
最初から、できない事をやろうとするのは、挑戦でも、冒険でもない。
無謀としか言わない。
ほんとの挑戦者や、冒険家は慎重に、自分のできる簡単な事から始めるんだ。

一歩いっぽ、一手いって進むんだ。

年をとるとな、できなくなることが増える。
昔はできたなんて嘆いても仕方ないじゃないか。
若い者には負けないなんて。
今の自分に執着してる限り、若者の邪魔、障害、足手まといになる。
老醜だよ。
年寄りには年寄りでしかできない事があるさ。
それを見極めるのが年の功。
年をとれば賢くもなるさ。
さもないと、晩年が寂しくなるよ。
綺麗に年は取るさ。
昔は、凛とした年寄りがいたな。

手本となるさ。手本とね。
生き様じゃないか。

親父は言ってたな、人生の幸不幸は、晩年で決まると。
晩節を汚したらいかんよな。
男子たるもの常に出処進退を明らかにする。
捨てるべきは未練。