人は、人さ。
自分の生きる世界の中でしか生きられない。
自分にできる範囲内でしか生きられない。
馬鹿だ、間抜けだと言われてもね。
できない事は、できないし。
わかりようのない事はわからない。
自分の限界の範囲でしか生きられない。
虎と素手で戦ったら勝てないし。
馬と競争してもかなわない。
自動車と力比べしても意味がない。
だから、どうしたというの。
配送だとかね。土方とかね。
肉体労働するしか能のない人間もいるさ。
でも、東大出た人間に土方仕事できるの。
人には、人それぞれ、得手不得手がある。
世の中は、天才や秀才だけで回っているわけではないよ。
そりゃあ、俺たちは、何の才もなく。
馬鹿だ、間抜けだと言われても、仕方ないかもしれないけどね。
まっとうな人生をさ。
人並みの人生を、おくる権利くらいはあるだろう。
スーパースターにはなれないかもしれないけどね。
ヒーローにもなれないかもしれないがね。
金持ちにもなれないかもしれないけどね。
幸せになることくらいは許されているだろ。
自分が自暴自縛になってさ、破滅的な事をしなければね。
真面目に、正直にさ、生きて何が悪いというの。
俺たちに生きる価値がないというの。

俺はね。
若いころ、お偉い人に言ったんだ。
不景気になって産業構造が変わったんだからね。
付加価値の強い産業に振り向ければいいんだよってさ。
でも人間なんてそんなに簡単に変われるものではないんだよ。
人生さ。人生なんだよ。
経済はね。人が生きてきた証だからね。
だから、いい学校出てなくても。
頭が悪くても。
少し、まっとうでなかったりしたとしてもさ。
それなりに、みんな、一生懸命、生きてきてね。
馬鹿と言われようがね。
ドンくさいと言われてもね。
一生懸命、ひたすら、専ら(もっぱら)生きてきたのをね。
いきなり、時代が変わったから変われと言われても、自分の生き方を簡単に変われるものではないんだよ。
それを景気が悪いから、事情が変わったからと言って。
生活かかっているんだからね。
どんな国にも、どんな時代にも、三割は、どうしよもない、性もない人間がいるんだよ。
だからさ、その三割の人間に何とか、まともなね、人生を送れるようにするのも、経済だし、政治なんだよ。
それを馬鹿だ、間抜けだと言って切り捨てたらさ。
政治だって、経済だって成り立たないの。
それがさ、賢い学者さんには理解できないの。
だからさ、いつまでたっても、まともな経済学なんてさできやしないよ。
右だ、左だと言っても始まらないの。
生きる事、生かす事を考えているんだからね。

強欲でさ。
金の亡者で、他人の事、どうでもいいなんてね。
思っている奴ばかりが、いい思いしている世の中なんて、間違っているよ。
間違っていると思わない。
それが、間違っているとさ。
それさえ、言えない世の中になったら、お終いだね。
いくら労働者の味方だなんて言ったってさ。
労働者だって、馬鹿じゃないんだよ。
いつまでも、騙されていやしないよ。
それよかね。
真面目に生きていたらね。
人並みに幸せになれる世の中にさ。
しようよ。
それが、本当の経済というものさ。
偉い先生は何というかわからないけどね。
高望みなんてしていないんだよ。
平凡でもいいからさ。
自分らしい人生がさ。送れればいいんだよ。

人は、人さ。
確かに、頭のいい人から見たらさ。
馬鹿で、間抜けで、ドジに見えるかもしれないけれど。
僕ら一人ひとりが、この国を支えているんだよ。
僕ら一人ひとりがいるから、この国が成り立っているという事をさ。
忘れないでほしいな。
戦争の時だってさ。
名もなき多くの兵士たちの働きがあったから。
皆、馬鹿だっさてさ。
生き残った者がさ、幸せだったっていうけどね。
生き残った人たちがね。
幸せになれたのは、誰のお陰か、忘れないでほしいよな。
生きて、豊かさを享受している人達が、この国のために、戦って死んでいった人を、馬鹿にする事なんてできないんだよ。
でも、同じような事を繰り返していない。
愚かな事をね。
一生懸命働いて、一生懸命生きていく事をね。
馬鹿にしていたら、結局、奈落の底に落ち。
周囲の国から攻められて、自分たちの独立だって危うくしてしまう。
周囲の国から馬鹿にされ。
屈辱的な思いを耐えていかなければならなくなる。
人は人さ。
人として生きていく事をね。
恥ずかしいなんて思っては駄目なんだ。
誇りをもってね。
一人ひとりが誇りをもって生きられる国にさ。
しようよ。
僕ら一人ひとりの働きがね。
僕らの未来を決めるんだよ。