キャシュフローの何が怖いのかといえば、住宅ローンがいい例。
借金をして家を建てると、月々の借金の返済が家計を圧迫する。
失業したり、病気になると、住宅ローンの返済が重くのしかかる。
住宅ローンの返済は、待ったなしであり、滞れば、家を手放す事にもなる。
しかも、残債があれば、家を手放しても、債務は残る。
かといって、サラ金に手を出したら破滅一直線になる。
でも、家計なら現金収入だから、住宅ローンだって、自動車ローンだって、借金を実感として肌で感じる事が出来る。

しかし、企業会計は、この借金の返済を実感として感じる事が難しい。
なぜなら、借金の返済は、利益と結びついていないからである。
借金の返済が、収支を圧迫しても、黒字になる事がある。
だから、怖い。
つまり、自覚症状がないままに債務が膨れ上がる危険性がある。
キャシュフローが悪くても黒字だからと言って、安易に、借金をすると、命とりななる。

裏付けのある借金ならいいが、裏付けのない借金をすると、それこそ、サラ金地獄に陥る。
じゃあ、借金の裏付けとは何か。
それは、含み資産と将来の収入である。
バブルが崩壊後、この二つの裏付けが縮小した。
それが、バブル崩壊後の長期低迷を招いたのである。
市場経済は、資産価値と将来の収入を安定させる事で成り立っている。
この点を忘れてはならない。

持ち家だけが住宅ではない。
住宅費というのは、借金の返済を意味するだけでなく、借家の場合は、家賃である。
家賃とローンの返済のどこが違うかというと家賃は費用だと言う事。
だから、損益でいえば、利益に関係する。
こうなると、持ち家と借家だと損益に不公平が出るから。
企業会計では、投資によって得た資産は、減価償却費として単位期間に按分して費用計上する。
注意しなければならないのは、減価償却費と借金の返済額とは連動しているわけではない。
また、すべての資産が償却の対象となるのではなく。
不動産は非償却資産なので費用計上されない。
この辺がややこしところで、損益と現金収支が乖離する原因となている。

ちなみに、借金の返済と言う勘定科目は、会計上、どこにもない。
じゃ、借金の返済の原資をどこで確保するのかというと、減価償却費と税引き後利益(純利益)、それで足りない場合は、増資するか借金の借り換え。
内部留保というのは、借金の返済に充てられた部分だから、資本金と言っても現金があるわけではない。
だから、内部留保に課税するなんとんでもない暴挙。
また、内部留保を取り崩しってなんていうのも、会計がわかっていないから。
そんなことされたら、納税の為に借金をしなければならなくなる。

だから、与信調査の時、長期借入金を減価償却費と純利利益の和で割った値を基準にする事もある。
不動産の様に非償却資産が投資には含まれているから借金の返済額を減価償却費だけで、網羅する事はできない。
足りない部分は、基本的に借り換える事になる。その時、担保されるのが土地などの資産価値。

長期借入金の返済額が減価償却費と純利益の和が上回ると、どこから資金を調達しなければならなくなる。
その時、担保するのが資産の含みだけれど、バブル崩壊後資産の含みがあるどころか、損を抱える事があるので企業の投資意欲が減退した。

このようなからくりが理解できないと、キャッシュフローと損益との関係は見えてこない。

住宅投資には、デッドクロスという問題があり。
償却が終わり利益が計上されているのに、借金の返済が終わていないと言うケースが発生する事がある。
この場合、問題なのは、借金の返済が終わっていないのに利益が計上され、その利益に課税される事である。つまり、資金がタイトなのに、納税しなければならないという事になる。
黒字だけど、現金収支が圧迫される。

黒字だから、金繰りがいいとは限らない。

借金をすれば、返済しなければならない。
金利負担もかかる。金利が低いうちはいいが、金利が上昇すれば利益を圧迫する。
金利は、費用だからである。
しかも、借金の返済は固定的支出。
注意してほしいのは、固定費でなく固定的支出だと言う点。
待ったなしに支払わなければならない。
しかも、損益には計上されない。
借金できればいいじゃないかと考えるむきがあるが、借金が出来なくなったら頓死である。