親父たちによく言われたものさ。
最初に入った会社、最初の上司の癖は、終生抜けないものさ。
だから、新入社員の教育は、手を抜くなと。
転職された時、転職先で恥をかくと。
翻って言えば、どんなに嫌で辞めた会社でも、その会社の流儀、考え方が沁みつているものだ。
だから、中途採用組はよほど注意しないと、価値観の差に苦しむ。
無意識に最初に沁みついた価値観、行動規範が出てしまう。
転職した時は、先ず、古い価値観を捨てて、転職先の流儀に従わないとね。馴染めない。
郷に入れば郷に従えというからね。
基本長というのは、微妙な差なんだよ。
服装とか、色とか、用語とか、口の利き方、書式みたいな。
だから、イラつく。落ち着かない。

基本的な事ほど、年をとればとるほど、身につけられなくなる。
してて当たり前、できて当然と言われることが。
わからない、できないと認めること自体許せない。
指摘した相手以上に、自分が許せない。
だから、認めない。認めないから改まらない。
いつまで、たっても、わからないし、できない。
わかっているけど、なおせない。
だから、最初が肝心なんだ。
若いうちに、基本を身につけろ。

報告しなさいと言われても、どう報告したらいいのか、どう報告書を書いたらいいのかわからない。
でも、三年も勤めたら、そんな初歩的な事なんて、恥ずかしくて聞けない。
それに、学校出たての人と同じことはできない。困ったものだ。
だから簡単にできる事から始めようとせず。
高度な事を、自分に求める。応用から学ぼうとする。
でも、基本ができなければ、高度な事も、応用もできはしない。
かといって、初歩的な事、当たり前な事を、教えようとすれば、馬鹿にしないでと怒りだす。
どうしたらいいの。
初歩的な事、基本的な事だから、できないとか、わからないというのは、死んだって厭だ。
認められない。
でも本当は、初歩的な事、基本的な事こそ難しい。
できて当たり前、わかていて当然なんてことはない。
専門家の常識と一般の人の常識は違う。
医者の世界で当たり前な事でも、医者以外の人から見れば、特別な事。
挨拶の仕方、作法だって服装だって、社会や、会社、家族ごとに違う。
宗教や地域、国によっても違う。
郷に入れば郷に従えだ。

基本といて侮ってはいけない。
基本を身につけられる年齢というのは意外と短いのだ。
例えば、スポーツや学業を考えればいい。
スポーツも学業も、基本を身につけられるのは、二十代前半までで、それを過ぎたら、少なくともプロになる芽はなくなる。
それまでに基本さえ身に着けておけば、多少ブランクがあっても可能性がないわけではない。
しかし、何の素養もなければ、何も期待できなくなる。
かくのごとく、基本は大切なのである。

直す事より認めさせることが難しい。
簡単にできることほど、認めがたい。
誰でも知っている事、できる事が出来ないから辛い。

人は、怖い人には怖れを抱く。
優しい人には恨みを抱くことがある。
だから人を指導するのは難しい。
特に基本を教えるのは難しい。
だから、躾けるのである。