ちょっと聞いてください。

結構、皆、他人から見たらつまらない事で、真面目に悩んでいるんですよ。
そんな高尚な事には思えないんですけれどね。
戦争とかね、革命とかね、差別とか、天下国家とかね。
死んだらどうなるとか言ったね。
何が善で、何が悪かとか。国際情勢はとか。為替はとか。
そんな事ばかりで悩んでいるわけではないんですね。
人付き合いが下手だったり。
不器用だったり。
口の聞き方を知らなかっり。
足が短いとか、おなかが出てきたとか、髪の毛が薄くなったとか、彼女と喧嘩したとかね。
大概は、下世話な事で悩んでいて。
僕も、もう結構長い事、生きてきたけど、なんも変わらない。
何気なく言われた事が気になったりとか、
逆に、ちょっと言い過ぎたかなとか。あんなこと言って傷つけなかったかなんてね。
考えてみるとくだらない事でね。
でも、つまらない事がキッカケでいじめや不登校になったり、最悪、自殺したりして。
元をただすと大層な悩みではない事が多いんですよ。
結構、皆、つまらない事に見える事で、深刻に悩んでいるんですよね。

そういえば、ジーパンがはけないと悩んでいた奴もいましたよ。
あいつ、親父が学校の先生で。
家に帰ってきても学校の先生なんだ。
それが嫌で、反発して。
でも、親父と俺とを結び連れているのが、身だしなみ。
それでジーパンがはけないと。
俺は、お前の気持ちはわからないって。
でも、いつか、ジーパンはいて来いよって。
そうしたら、しばらくしてジーパンをはいてきた。
好きな子を前にすると毒づいてしまうと悩んでいる奴も。
馬鹿だねって思うけど。
当人にとってはいつまでたっても恋人ができない。深刻ですよね。
異性を前にしたら、何も、話せないなんてのもいましたよ。
正直わからないよ。
でも、お前のつらさはわかるよって。
だから、そばに一緒にいてやるって。
神様とは、そんな存在じゃあない。

他人に言えないような。些細な失敗とか、間違いね。
どうでもいい事なんですけれどね。
くだらないとは思うのですけど、妙に、心に引っかかって、残ってしまうんですね。
嘘をついたり、誤魔化したり、言い訳したり、とぼけたり、逃げたり、他人の性にしたりね。
でも自分は誤魔化せないですから。
救いを求めると言ったって、大概は、日常的で、ちまちました事ね。くよくよした。
でも、そういう、他人が聞いたらつまらない事でも、当人からしたらすごく深刻でね。
くだらない事で自分が許せなくなるとね、陰気になっていく。憂鬱になる。
どんどん自分が許せなくなり。
親切にされても、つい、かっとなって、つかかって、増々、自分が許せなくなる事をしてしまう。
だから、そんなくだらない事で、いつまでも、悩んでいると心が弱くなるんですよ。
生きづらいなと感じたり、一人夜落ち込んだり、次の朝、布団が重く感じられたりね。
いじいじと、だらしなくね。
死にたくなったりもする。

相談できるといいんですけどね。
相手もいないし。
相談するような事でもない。
相談しても、取り合ってくれないだろうし。
馬鹿にされたりしそうで。
泣きそうになる。いい年してね。
大体、人間なんて成功した話より、失敗した話が好きだし。
いい処より、悪いところの方が印象に残る。
慰められるどころか、逆に、たしなめられたり、いじられたり。
挙句、言い触らされたら目も当てられない。
皆、ゴシップが大好きときているからね。

スッパリ、認めてしまって、改心すれば楽なんですよね。
でも、なかなかそういう訳に行かなくて。いつまでも引きづってしまう。
認められずに、意地はるから、一人ぼっちなったりしてね。
頑固にもなる。厭ですよね。
そういう時に、神様って便利なんですよ。
こんなこと言うと、怒られてしまうかもしれないけれど。
何でも聞いてくれる。
神様って気さくで、気取らないで。
そういう存在なんです。
だから、神に、懺悔するんですね。御免なさいって。
自分に素直になる。神様の前なら素直になれる。
誤魔化しようがないし、誤魔化したって意味ない。
なんでも、神様に告白し、洗いざらい話してしまって、そして、許しを請う。
毎日、毎日、その繰り返し。それでいいんですよ。
そうすれば悔い改める事もできる。
何より自分が許せるようになる。
些細な事だからこそ、ほっておくと心の底にたまっていってヘドロのようにね。
そういう、どろどろとしたものを浄化してくれるのがですね。信仰ですよ。
それでいいんです。それで。
神様は本当に寛大で慈悲深いんです。何よりも。

正直言ってね。信仰てプライベートな問題なんです。
個人的な悩み、他人にね、相談できないような。
だから神様なんです。それも怖い神様でなく。
包み込んでくれるような。
悩みって、多くは、自分以外の人には、どうでもいい事なんです。
だから、真剣に向き合ってくれるのは神様しかいないんですよ。
あなたは神に選ばれたのです。
でも神様はあなたを優しく見守っておられんですよ。
許しってくれんですよ。

人を殺したとか、強盗したとか、騙したなんて事で、普通は悩んでなんていないんですよ。
心もない事をいって、相手を傷つけたんじゃないかとか。
つい、嘘をついたっとか。
むしゃくしゃして、意地悪したとか。
そんなことで、自分が許せないで…。
心の底に、わだかまりが残って…。
いつまでもくよくよ、心のどこかに引っかかっていて…。
まだ、そんな事気にしてたのかなんって、言われそうなことなのに、気になって。
夜も眠れなくなってしまい。

逆に、人に言われたことに囚われて、許せなくて。
あるいは、悪意でしたわけでも、故意にしたわけでもないけど、悪く取られたり、事故になったりして…。
人と会うのが怖くなって人付き合いが、上手くできなくなったり。
引っ込み思案になったり。
自分に素直になれなくて…。
謝れば済むのかもしれないのに、妙に意地をはったり。
なんで俺だけが。
自分が嫌いになってしまいそうで、生き苦しく感じてね。

自分の無力感に打ちのめされて。
なんで、俺だけがこんな目に合わなければならないんだ。
俺のどこが悪いんだ。
自分を責めて、出口のないところで落ち込んで。あがいて。
救いようがない。
つまらない、些細な事だから。
誰にも、相談できない。
悩みを打ち明けられない。

そんな時、神に懺悔するんです。
神は何もおっしゃらないし、姿も見えないけど、感じるんです。

だって、あなたは、そうやって生きているでしょと。
そう優しく微笑んでおられる。
一人で、悩んでいなくていいのよ。
自分をそんなに責めないでいいから。
自分にもっと素直にならないと…。
自分を許してあげなさいと、微笑んでおられる。

信仰は、生きる勇気を与えてくれる。